最近、人気復活の兆しが見られる「バブアー」についてお話していきます。
ところで若い皆さんはイギリスのアウトドアブランド「バブアー」をご存知ですか?
ロイヤル・ワラント(エディンバラ、エリザベス、チャールズ)を3つも授かった、ぶっちゃけ日本人の我々にはピンとこないけど、すごいアパレルブランドなのです。
購入した当時、高校生だった私の耳にも届いたぐらいなので、本国イギリスでは「猫も杓子も皆バブアー」なのでしょうね。
当時は今ほどインターネットが発達しておらず、「パソコン通信」といって黒電話の受話器をカプラーにガッチャンコして「ガーガーピーピー」鳴らして、メール一つ送るにも数分かかっていた時代です。
当然周りの友人に「バブアー知ってる?」って聞いても、「知らない、なにそれ?」と・・・。
そんな中、高校生の私には「バブアーめっちゃイケてるやん!」と、帽子×2つ、ジャケット×2つ、セーター×1つ、手袋×2つ、マフラー×2つ、を少しずつ買い揃えた記憶があります。
今はジャケット×1つ、手袋×1つだけになってしまいましたが、大切に取ってあります。
少々、前置きが長くなってしまいましたが、バブアーのワックスジャケット(コート)は、他の衣類と違って「特別な管理」が伴います。
今回はその管理方法と心意気を私なりにお話させて頂きます。
これから買われようとしている方の参考となれば幸いです。
因みに、便宜上「バブアー」と書きますが、私は昔から「バーヴァー」と発音しています。
バブアー様はクサイ
バブアーを長年愛用するに当たり、誰しも「オイニー問題」を避けては通れません。
新品を購入当初は「ワックス特有の臭い」も、さほど気になりませんでしたが、(むしろそれが心地よくも感じた)これが数十年も過ぎるとオイルが酸化してしまい「錆くさい」オイニーを放つようになってきます。
調べたところ、昔のワックスは「動物性」の油脂が使われていたらしく、今販売されているワックスとは成分が異なるとの事・・・。
なおさら、このまま着続けるのは色々と問題が発生しそうなので、思い切ってバブアーのタブーに挑戦してみました。
バブアー様ご入浴
皆さんも衣類は汚れたら洗いますよね。
当然ながら、衣類に属するバブアーも汚れたら洗いましょう。
因みにメーカーは洗濯を禁止しています。
その理由として、「作業着として」の機能が低下するからです。
バブアーを「ファッションとして」着る分には関係無いので無視しましょう!
こういうのは思い切りが大切です。
防水性、防寒性、防護性、耐久性、オイルを取り除くだけで、バブアー特有のこれら機能も一緒に洗い流すことになりますが、街着として使用する分には多少機能が低下しても支障ありません。
それよりもオイニーが酷くて、着ない事のほうがもったいないです。
但し、それでもやっぱり「機能美」を保ちたい方は「控えた方が賢明」です。と付け加えさせて頂きます。
用意するもの
1.バブアー様ご本人
2.横長の衣類ケース
3.ブラシ(馬毛、豚毛どっちでもOK)
4.風呂の残り湯(ぬるま湯)
5.液体洗剤
酸化したオイルを効率的に生地から取り除きたいので、洗剤とぬるま湯が必要です。
冷たい水道水ではオイルは取り除けません。(裏地の汗や皮脂が目的ならむしろ水道水を勧めます。)
滲み出たオイルは、周りを汚すので、自宅のバスタブや洗濯機を使うと後始末が大変になるのでおすすめしません。
コインランドリーを使用する方も一部おられるようですが、通常の汚れとは異なるので、後から費用請求されても当方は責任持ちません。
そこで用意したいのが長方形の「衣装ケース」です。ホームセンターに行けば2,000円程度で買えます。
しかも横に長いから、バブアーを重ねずにブラシを使って表面の油を掻き出すのに大変便利です。
余談になりますが、この「衣装ケース」は山用のゴアテックスウェアや寝袋を洗うのにも使っています。
① 洗い
昨晩の風呂の残り湯(ぬるま湯)に液体洗剤を適正量入れて、後はひたすら押し洗いです。
加えてブラシで表面を擦れば効率的に隅々のオイルを取り除くことが出来ます。
② すすぎ
すすぎは何度も気が済むまで行って下さい。
この時も捻って絞らず、優しく押す様にすすいで下さい。
すすぎの水もぬるま湯です。
③ 脱水
「洗濯機」は絶対に使わないで下さい。
バブアーは表地のワックスが裏地に染み出ないように2重構造になっています。内部に残った水が遠心力で裏地を痛めてしまう恐れがあります。
④ 乾燥
べちゃべちゃのままハンガーで陰干しして下さい。
その時も下に「受け」を作って下さい。垂れたワックスが床面を汚します。
⑤ ①〜④を3回繰り返したら完成です。
使う洗剤や季節、バブアーの状態により仕上がりに差が生じます。
回数はご自身の目で確認して行って下さい。
因みに私は3回、時期を空けて行いました。
それでも「完全にワックスを取り除くのは不可能」でした。
指で生地を触るとワックスのしっとり感は多少残りますが、指にワックスが移ることは無く、サラッとしておりスマホの画面が油で滲むことも無くなりました。
これで「オイニー&ベタつき問題」は解消です!!
洗濯前と後の変化
見た目の変化についてもお伝えしておきます。
洗濯することで、以下の変化が見られますのでご注意下さい。
1.色が変わります。
2.サイズが変わります。
1.色については、油が抜けて艶が無くなりマットで起毛した生地肌に変化します。
明るさもかなり明るくなるので、しっとりと落ち着いた感じが好きだった人はリプルーフして元に戻されても良いかと思います。
上の写真は半身リプルーフした状態です。オイルが抜けるとこれだけ色味が明るくなります。
それと雨で濡れると染みた部分が思いっきり目立ちます。
2.サイズ変化については、部分的に1〜2㎝短くなります。面倒なので測ったりはしておりませんが、少し小さく感じられると思います。
ぬるま湯の温度を上げれば上げるほどワックスは溶けて滲み出てきますが、生地もそれに応じて縮むと思われます。
出来るだけ低い温度で洗ってあげるほうが良いと思われます。
以上、「オイニーとベタつき問題」が解消される代償として、これら懸念がありますので許容出来る方のみ実行して下さい。
リプルーフ
■必要な物
・専用ワックス
・ブラシ(スポンジ)
・ドライヤー
まず初めに用意するのは、季節を問わず「ドライヤー」です。
ドライヤーで生地を温めながら作業して下さい。
たとえ真夏の炎天下の中でも、生地が常温だと液体だったオイルがすぐに固形へと変わってしまい、伸びも悪くて作業効率が落ちてしまいます。
①部分的にワックスを塗る場合
生地がよく擦れる肘や脇といった部分にオイルを追加で塗りたい場合は、固形ワックスをそのままブラシに付けて、冷めている生地に薄く塗布して下さい。
その後ドライヤーを当て、ワックスが溶けてきたらブラシで磨けばOKです。
この方法だと厚塗りにならず、寒い時期でも行えます。
それと、「傷隠し」にも使えます。擦れて引っ掻いたような傷程度ならワックスを塗ってあげるだけで新品同様に元通りです。
お試しあれ!
②全体的にワックスを塗る場合
初めに申しておきますが、慣れていないと(慣れていても)無茶苦茶重労働を強いられます。
片手でワックスをかけて、もう片手でドライヤーを当て続けねばなりません。
立って出来る作業台が無いと(アイロン台とかで中腰だと)腰をやられます・・・。
さて、本題に入りますが、準備するものは一緒です。
今度は湯煎して完全に溶かしたワックスを用意して下さい。
そしてワックスは常に温め続けられる環境を整えてから始めて下さい。
■作業手順
①生地をドライヤーで温める。
②ワックスを染み込ませたブラシ(スポンジ)で塗布する。
③ドライヤーを当てながらワックスを塗り拡げる。
これの繰り返しになりますが、ポイントは溶かしたワックスとドライヤーです。
溶かしたワックスとは、常に高温のワックスを用意して下さい。常温では固まりだすので伸びが悪くなり厚塗りになってしまいます。
そしてドライヤーで生地を温め続けられないと、ワックスを塗った先から固まりだし、この場合も厚塗りになってしまいます。
出来るだけ、均一に薄く塗ることを意識しないと、いくらでもワックスは生地に入っていきますので、ベタつきはもちろんのこと、鎧のような重さになってしまいます。
保管方法
クローゼットの奥にビニール袋を被せて来季の出番まで仕舞っておくとカビが発生します。
風通しの良い場所に表地を裏返しにして保管するのがベストです。これなら他の衣類に触れてもオイルが付かないからね。
ショップの方も、「裏地に湿気がこもりやすいので着たら裏返してハンガーに掛ける様にして下さい。」とのこと。
そして、たまには良く晴れた日に外で陰干ししてやって下さい。
まとめ
「オイニー&ベタつき問題」をどうにかしてほしいと切に願っている人だけが「洗濯」を「選択」して下さい!
それ以外の人が「選択」されても、あまり良いことはありません。
くっさい古いオイルを抜いた後にリプルーフしようと考えている場合、元のオイルが抜けてしまっているので、通常より多めにオイルが必要になります。(私のビューフォートでアルミ缶の半分ぐらい消費)
最後に一言
バブアーはひと目見て「あっ!バブアー着てる」って分かります。
知名度が上がれば上がるほど、バブアー特有の問題も広く認識され、所有者は周りへの気遣いが必要です。
下手したら電車で隣人の高級な衣類やバックを油で汚してしまい費用請求された。なんてこともあり得ます。
私は電車や車の時は脱いで裏側にして丸めるか、端の方で立ったままで座席には座りません。
加えて日本の女性ウケは最悪です。(本国イギリスもかな!?)
巷で増えつつある?「女バブ」と言われる人に希望を託しても彼女たちは極少数派です。バブアーのショップ店員以外、街中で着ている女性を一度も見たことはありません。
街着用にバブアーの購入を考えているなら、その辺りの気遣いが出来ないと安易に買ってはダメです。
「スーツの上からガバッと着るのがカッコいい」みたいに、ファッション雑誌でよく目にしますが、その様な使い方をメーカ側は想定していません。
確かにカッコいいのは認めます。私もそのスタイルに憧れた一人です。
ただ、あくまで作業着(乗馬、フィッシング、狩猟、バイカーetc..)を目的として開発された衣類なので、「街着」には適しません。
ファッション雑誌に惑わされないように本質を見抜いた上で目的に応じた使い方をしないと、「思わぬトラブル」や「放棄・売却」に繋がるのでご注意下さいね。
それについてメーカー側も認識しており、近年では「ノンワックス」のバブアーも発売されるようになりました。
ですが、個人的に「アレ」は、「バブアーであってバブアーではない」と思ってしまうところが何とも歯がゆいところ・・・。
周りへの配慮と引き換えに、「バブアー本来の魅力を失っている」と言ってしまっても過言ではないでしょう。
ある意味、その辺りの「心の切り替えが出来ているバブアー上級者」にとって便利なアイテムな気がしています。
これから初めてバブアーを買おうとされる人には「ワックスタイプ」をオススメします。
確かにメンテと維持に手はかかりますが、愛着を持って長く着続ける事が出来れば、世代を超えて最高の一着になります。
流行りに左右されないモノを一着持っている満足感も得られるし、コーヒー片手にハンガーに掛けたご自分のバブアーを眺めて悦に入るもよし。
よろしければ皆さんも是非!
あっ、あと一つ言い忘れてました。
「冬場の防寒着にはなりません!」
中にセーターやダウンを着込まないと寒くて歩けないので、見た目に騙されないように。
そのため、サイズ選びは慎重に!
アームホールや胴回りの小さい「SL(スリムフィット)」だと冬場は窮屈で着れないなんてことも・・。ご注意下さい。
ワタシ的にはバブアーは「クラッシクスタイル」が一番似合っていると思いますけどね。そこはお好みで!(ふふふ・・・。)
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