今回は満を持して「レインパンツ」の紹介をしたいと思います。
それはアークテリクスのSS19最新モデル「ベータSLパンツ」になります。
以前の旧モデルと何が違うのか?
旧モデルはレインパンツとして、とても重要な「ある部分」が欠けていました。
それを理由に購入を躊躇(ためら)ってましたが、最新モデルでは願い叶って完璧なレインパンツとして生まれ変わったのです。👏👏
その「ある部分」とは、
「サイドジッパー」です。
もちろん旧モデルにもサイドジッパーは備わっていますが、長さが裾から膝上までしかなく、Newモデルの様に腰まで無かったのです。
因みに、旧モデルは通販やアウトレットで安価に出ていますので、「サイドジッパーの長さ」に拘りがなければ、そちらをお買い求め下さい。
なお、Newモデルは展開カラーがブラックしかないので、豊富なカラーが存在する他の衣類の様に、不人気カラーがアウトレットに流れてくるということはありません。。。残念!
それともう一つ、購入に際して新旧モデルのレビューサイトが、意外や意外、1つも見つかりませんでした。。あっても販売サイトの紹介記事のみ。。。
私は「実際に使用した個人の感想」が聞きたいのだよ!
ごもっともです。先生!!
アークテリクスの製品に限らず、ジャケットのレビューはよく見かけますが、「レインパンツだけ」のレビューを読んだことがありません。
それなら私が最初の一人になろうじゃないか!
と言う訳で、実際に私が使用した感想を詳細にお伝えします!
オフィシャルサイト
https://arcteryx.com/jp/jp/shop/mens/beta-sl-pant
アークテリクス製品の分類について
先ず初めに、アークテリクスの製品は、モデル名を見れば全ての基本性能が分かる様にネーミングされています。
但し、分類が多岐に渡り、消滅・統合したものまで一つ一つ説明していると年が明けるので、「またの機会」とさせて頂き、ここでは「ベータSLパンツ」に限りお話します。
コレクション:「基本装備」について
「ベータSLパンツ」は特定使用に特化したパンツではありません。アークテリクスが示す「基本装備」に属し、あらゆるフィールド、シーズン、行動スタイルにマッチする汎用性の高いモデルとなっています。
サブカテゴリー:「SL(最軽量)」について
一般的に3レイヤーが良いとされるのは、直接肌に触れる面に肌触りの良い生地をあてがうことで、快適性の向上と皮脂による劣化を防いでいます。
ただし、それと引き換えに生地1枚分の重量と製造コストが増します。
「ベータSLパンツ」は裏生地を無くし、直接ゴアテックスメンブレンに凹凸のあるフッ素コーティングが施されています。
そのため、非常に軽量に出来ているのです。
製品グループ:「ベータ(万能)」について
「ベータ」は、あらゆるシチュエーションに幅広く対応するよう設計されたモデルです。
極限を極める「アルファ」ほどの性能は必要ないけど、山岳行動において必要十分な機能を満たしてくれる、それが「ベータ」です。
「ゼータ」は、トレッキングから街でのオシャレ着に適したモデルとされますが、十分に高機能です。
以上、「ベータSLパンツ」のネーミングから判る、①対象アクティビティー、②機能・使用目的、③デザインの特徴、でした。
これらから、私が「ベータSLパンツ」に求めたのは、①真夏のレインから、真冬のスノーまで対応出来る汎用性と、②常に携帯できる軽さです。
真夏の夕立ちでもすぐに履け、止んで暑ければサイドジッパーを腰から裾まで全開にする事だって可能です。
冬の晴れた日は、内側が起毛した冬用パンツ(ソフトシェル)を履きますが、それだけでは天候の急変には対応出来ません。
吹雪や雨あられをシャットダウンしてくるハードシェルの存在は、1枚持っているだけで行動中の安心感がまるで違います。
それらを可能にしてくれたのが、唯一「ベータSLパンツ」だけなのです。
「ベータSLパンツ」の機能について
サイドジッパー
旧モデルからデザインが見直され、それまで膝上辺りまでだったジッパーが、Newモデルでは腰まで延長されました。
山岳での使用を想定したレインパンツなら「絶対欠かせない機能」であると私は断言します。
なぜなら山では急に豪雨になることがありますが、いちいち靴を脱いでいられますか?
だからと言って、ドロドロの靴のままレインパンツに足を通せますか?
対策としてビニール袋を靴に被せてから履いたりもしてましたが、面倒だし、ビニールが汚れてゴミになるし、最悪、風で飛んでいってしまいます。
まして岩稜帯で靴を脱ぐことなど不可能だし危険です。
先日、奥穂高岳でレインパンツを履くため靴を脱いでいる親子を見かけたけど、不安定な場所で片足を上げる行為は見ていたこっちがヒヤヒヤでした。
その点、SS19モデルの「ベータSLパンツ」なら、そんな心配は要りません。
靴を履いたままオムツを履くように(?)腰のフックを留めたら、後はジッパーを裾まで下ろしたら完成でです。
至って簡単だし、時間もかかりません。
山では脱ぎ着を行動中に行いますが、特にパンツは面倒なので、履かなかったり、脱がなかったりと、後々後悔した事がありました。
その様な場合でも「ベータSLパンツ」なら苦にすら思わないので、悩む必要が無くなりました。
悩んでいる間に本降りになってきて、ベタベタになりながら履いてたな・・・。
ウエストアジャスター
ウエストを調整するベルトですが、これがまた良く出来ています。
左右それぞれ独立したフックをウエストサイズに応じて任意の位置に留められるだけでなく、左右がゴムで繋がっており、お腹周りの広がりに追従してくれます。
例えば普通に立っている時と、しゃがんでいる時とではウエストサイズが異なるのに対し、腰のゴムが収縮してくれるおかげで苦しくもならないし、余る事もありません。常にジャストフィットが得られる構造になっています。
紐フックドローコード
このドローコードもアークテリクス独自の優れた機能です。
パンツの裾を絞った際に、余ったコードが地面に垂れ下がっていると、踏んだり引っ掛けたりして危険です。
アークのドローコードは上方向へ引っ張るため、余ったコードが裾から飛び出る事はありません。
しかもコード自体に張りがあって尚更垂れ難くなっています。
「ベータSLパンツ」の細部について
素材
構成:GORE-TEX PACLITE® PLUS with N40r & N150p-X & ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コーティング
ゴアテックス製品の中で最も軽量・コンパクト(薄い)なPACLITE(パックライト)が、SS19モデルからPLUS(プラス)に進化しました。
新旧とも裏地無し2層構造であることに変わりはありませんが、新は裏地を触ると凸凹しており、マットな質感でサラサラしています。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コーティングとは、いわゆるフッ素樹脂の事です。フライパンなどにテフロン処理されるアレです。
耐熱性・耐薬品性・耐腐食性はもちろん、最大の特徴は最も摩耗係数の小さい物質であることです。
そのため、重ね履きしても膝の屈曲によるストレスを感じません。
裾のフリップボタン
通常、フリップボタンは裾の外側に配置するのが一般的ですが、美意識の高いアークなので余分な装飾はなるべく外目に付かないようになっています。
というのは、半分冗談で半分本気です。
実は機能的観点からも理に適っており、フリップが内側だと裾のサイドジッパーを開けても、裾が広がりません。しかも1アクションで完了します。
フリップボタンが外側だと、①フリップボタンを開ける、②サイドジッパーを上げる、③フリップボタンを閉じる、の3アクションが要求されます。
美しさ&機能性を追求した結果だと思います。
ブーツ連結用フック
裾の甲にあたる部分に、ブーツの紐と固定するフックが付いています。
未使用時は折り返して上のループに引っ掛ける様に出来ています。
インステップの生地補強
通常、アイゼンガードは表地に「ガッツリそれらしい強固な張り布」が当てがわれますが「ベータSLパンツ」には存在しません。
え!?アイゼン引っ掛けたら穴開かない?
実は表地では無く、裏地にこっそり張り合わせてあります。
なんで裏地に張り合わせてあるのかって?
おさらいですが「ベータSLパンツ」のコレクションは「基本装備」でした。
季節問わず、あらゆるコンデションに対応するように設計されています。
だって、夏場のレインパンツに、補強のあて布がガッツリ、しかも表から丸見えに付いていたらカッコ悪いですよね!?
但し、厳冬期仕様の強固なアイゼンガードでは無いので過信は禁物です。
もちろん冬場は専用のゲイターを装着します。アークに穴や傷が付いたら嫌なので・・。
因みにゲイターはアウトドアリサーチの「バーグラスゲイター」を使用しています。
その他に「クロコゲイター」、「エクスペディションクロコゲイター」が同社から発売されていますので、お好きなモデルをどうぞ。
フロントの止水ジッパー
余り使う機会は無いと思われますが、必要とする時、無いと困ります。
ここも抜かり無く「止水ジッパー」になっています。
縫い目が表地に出ない縫製技術
アークの製品は表生地にミシン目がほとんどありません。
表地に縫い糸が出ていると、衣類同士の擦れや、岩との接触などにより、次第にほつれてきます。
アークは縫合技術が優れているので、縫った後に縫い糸が表に出ないような仕上げになっています。
それはまるで生地同士を張り合わせたかの様で、美しさの見た目が全然違います。
上の写真はおしりに当たる部分ですが、擦れる部分なので絶対に縫い糸は表に出ていません。
シーム処理が芸術的
アークのお家芸とも言えるシームテープの処理ですが、ここにもアークらしい拘りが見て取れます。
シームテープの幅は13㎜で統一され、末端が重なってもぶ厚くなったりせず、その切り口もデザイン性を感じさせます。
股下など曲がった箇所は、人の手で丁寧に貼られているので、浮いたり剥がれたりしません。
通常、素材の異なるシームテームを多様すると、透湿性が落ちてしまうのですが、アークの製品はゴアテックスのシームテープを用いる為、その様な心配もありません。
各メーカの裏地のシーム処理をよく見てますが、アークがダントツできれいですね。日本製でも下手なシーム処理を見かけます。アメリカ製は普通に剥がれてます・・。
ミシン目のピッチ
表地にミシン目が出ている部分は、①ウエスト、②フロント、③裾だけです。
しかも縫い幅のピッチが細かく、非常にキレイです。
具体的に13cm間で14ピッチで縫われてました。
ということは、1ピッチ=1㎜以下となります!!
生地の厚さが変われば、縫い目の長さも変えると思いますが、隙間なく整然と並んでいる様に惚れ惚れしますね。
サイズについて
私のスペックになりますが、ご参考程度にどうぞ。
170cm 62kg 筋肉質
■購入サイズ
・ウエストサイズ :スモール
・インシーム(股下):ショート
正規ブランドストアで購入したので、「インシーム」を選べましたが、通販やアウトドアショップだと、サイズの品揃えが無いかもしれません。
ご自分で「足の長さは日本人並」と自覚している方は、いいカッコせず「ショート」を選びましょう。
(私も)少しだけ見栄を張って「レギュラー」を試着しましたが、裾が5cmだったかな?長くなるので、見た目のスッキリ感が失われて一瞬で脱ぎました。
ショップ店員も言っていましたが「ほぼ皆さんショート丈を選ばれますよ。」だそうです。
価格について
アークテリクスは「高額」です。
その理由は一手間も二手間も掛け、最高の技術と品質を保っているからだと、お分かり頂けたのではないでしょうか?
それでは恒例の?他国と日本との価格差について表を御覧ください。
全て円換算してあります。(2020.9.18現在の為替レート使用)
日本 | カナダ | イギリス | ヨーロッパ圏 | アメリカ | スイス | 中国 |
$320 | £220 | 250€ | $299 | F298 | 元2,598 | |
28,000円 | 25,339円 | 29,721円 | 30,950円 | 31,263円 | 34,183円 | 40,130円 |
±0円 | -2,601円 | +1,721円 | +2,950円 | +3,263円 | +6,183円 | +12,130円 |
この結果にはちょっと驚きました。
以前調べたときは、日本が最も高かったのに、わずか1年足らずでずいぶんと様変わりしてしまいました。
本国のカナダが最も安いのは当然ですが、中国があまりにも高すぎる・・・
世界の情勢がレインパンツ1つにまで影響を及ぼすとは。いい勉強になりました。
履き方(おまけ)
最後に、履き方ですが、正直言って最初の内は「慣れ」が必要です。
両サイドのジッパー全開状態だと、前後左右がまったく分かりません。
例えるなら「黒い一反木綿」の様なふんどしを巻く(履く?)要領です。
暗闇で手渡されたら、絶対に履けない自信があります。
現地で手間取っていたらカッコ悪いので、サラリと履けるように何度か練習しておく事をおすすめします。
まとめ
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
今回も長くなってしまいました。(もっとアッサリしたいな・・)
(その代わり)魅力の全てを余すこと無く伝えられたと思います。
<主なポイント>
①2レイヤーで軽量
②畳むと小さく携帯しやすい
③裏地は凸凹したフッ素樹脂加工でサラサラ
④表地は縫い糸が無く擦れに強い
⑤ブーツを履いたまま脱ぎ着が出来る
⑥立体裁断でスタイル抜群!
⑦アークマーク(始祖鳥)がカッコイイ!
⑧季節を問わず使用できる
もし、どこのレインパンツを買おうか迷っていたら「ベータSLパンツ」で決まりです。
年間通して使えるのが最大の魅力です。
高品質なアークなので価格は少々お高いですが、使用頻度で割れば他のウエアより安いはず。
是非、常時携帯アイテムの一つに「ベータSLパンツ」を加えてみてはいかがでしょうか?
常備アイテムと言えばもう一つ、シェルジャケットです。
私は廃盤モデルの「シータAR」を使っています。そちらの記事はこちら。
アウトレットや通販で残っていたら、かなりお買い得なはずです。checkしてみて下さい!
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